ーレディネスとメトリクスとの関係ー
PBLがよくわからないというスペック・ユーザが多い。特にレディネスやメトリクスは聞きなれない言葉であるために戸惑いがあるようだ。そこで今回はPBLを理解する上で大変重要なレディネスとメトリクスの関係について解説する。なおここではレディネスは即応性、メトリクスは測定規準として記載する。
■レディネス-米国が掲げるスローガンの意味と狙い
上記URLにあるように、レディネス(即応性)は米国防次官補がマテリエル・レディネス(MR:装備システムの即応性)として総括している。米国において即応性はロジスティクスの根幹であり,最優先事項である。
DODは1990年代からこの即応性を定義付け、測定し、評価することで安全保障上の不安定要素を取り除くスローガンとして重要視してきた。PBL構想が大きな成果を挙げているのは将に米国が求める即応性に対して最も経済的且つ効果的な手段であることに他ならない。DODによれば現在ほとんどすべての活動に即応性が浸透している。即応性とは単に他のプログラムのように独自に対処できる機能の1つではない。即応性は新たな安全保障に挑戦する不安定な環境で活動する米軍が体験する複雑な範囲でのさまざまの要素を伴っているからである。
1990年代の後半に入るとDODは即応性という言葉を定義し、測定し、評価し、反映し、対処しなければならないと考え始めた。そして即応性を実行するために不可欠な政策や予算および運用上の舵取りを特定してきた。現在即応性はDODにとって第一に優先される政策となっている。DODは米軍が自らの任務を即応性を伴うことで遂行できることを保証するために必要な段階や手段を講じることを心がけなければならないとしている。
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そこで何に即応するのかという疑問がある。DODの最優先課題
新たな国家安全保障戦略の要素を実行して国家間の戦いに勝つために即応性を伴った米軍を維持することにあるとしている。即応性を伴った米軍を配置し、備え、国家の安全保障に対する危機に対処するよう訓練しなければならないからである。またこれらの危機には大規模な地域紛争への応答や海外派兵活動および他の主要な任務が含まれている。そこでDODはこれらの機能のために米軍は次のような即応性に対する基準を満たさなければならないとしている。
■米軍の即応性に対する基準
1.作戦域に移動し、展開するのにかかる時間。
2.軍が一度に実行しなければならない任務。
3.これらを持続するための軍が従事する時間の長さ。
DODは適切な米軍の配備、近代化した設備、持続性、ロジスティクスの手段と装備品が即応性に適うことで人員を訓練したり、動機づけることが可能になるとしている。
即応性を第一優先とするDODの指導者たちは、1970年代や1980年代の空洞の時間からの教訓をもとに、再発を防ぐための方策を慎重に取ってきた。教育されないことが、訓練されないことが、備えられないことが、持続しないことが、また戦略上可動でなかったことが当時の米軍に蔓延していた。だからこの教訓こそが今日の即応性に対処する米軍の根幹となっているのである。
ところでベトナム戦争後の米軍削減や1970年代と1980年代前半の結果として起こった空洞の時代と比べて、今日の米軍はベストの状態にあるという。その主な理由に米軍が募集し、訓練し、維持し、保有している人員の質が挙げられる。虚ろの時間が明確に質に反映されるという教訓が今日の米軍に存在している。
道徳的不安
今日の政治上、財政上そして稼働している環境への達成、およびその維持においてDODは即応性を目標に掲げることを挑戦であると考えている。 旧ソ連の崩壊後米国は軍を縮小し国防費を下げた。 しかしながら過去において米軍を縮小したときの虚ろさは今では阻まれている。即応性を維持することへの挑戦は主として3つの変数ー人員、装備、および訓練ーからなり、どの1つの欠落も即応性を下がらせるものと考えられている。
即応性の劣化は時間がたつにつれ累積される。必要な即応性レベルの装備品システムを改めて取得するために技術的に優れた装備、および訓練を開始し、老齢化する個々の人員を再開発するには20年かかる。 資源と人員の腐敗は即応性を再建する時間を大きく後退させることになる。DODでは即応性への挑戦を短期、中期、そして長期的に分析しているが、これらの挑戦は米軍がどれくらい21世紀において即応性を達成できるかにかかっているといっても過言ではない。
■メトリクスー成果を測定するための基準
上記のように米軍の即応性は航空機など個々の装備品システムを取得する際に要求される成果に反映されるものであり、成果は個々の装備品システムを取得するための契約(PBC)に用いられるメトリクスにより特定されるものとなる。
このメトリクスとはPBLの成果を測定するための複数の設定基準で、個々の設定基準はメトリックという。そこでこれをどのように生成し測定するかを決定するのは取得を要求する米軍(要求元)の重要課題である。PBL契約では全てを契約業者の責任とするものであるが、要求元において重要なことはどのようにメトリクスを生成すれば成果を求めることができるかにあるといってよい。このメトリクスはそれにより契約の成否が判断されるだけに大変重要であるが、いずれにせよPBLを簡単且つ測定可能な要素にすることが求められる。
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つまり航空機など装備品システムの要求元はシステムの信頼性や可動率、可用性あるいは納期短縮や在庫縮小など彼らにとって重要な要因を契約業者の成果によって簡単に測定できるメトリクスとして予め策定しておかなければ契約業者も何を以って良しとするかが定まらない。そもそもPBLの主目的が事前に計画した装備品システムの即応性の確保にある限り、メトリクスはこのように設定された目標を簡単且つ測定可能なそして識別されたものでなければならないからである。
測定可能なメトリスクの生成はPBL成功のカギである。そこでどのようなメトリクスがPBL成功の鍵なのか。DODでは経験主義的に5つの重要なメトリクスを下記に挙げているが、そもそもメトリクスは個別の装備品システムに依存する部分があるだけにこれらに限定されるものではなく、より誂えた(テイラー)ものでなければならないとされている。例えばF-35に策定されるメトリクスは信頼性、保全性、可用性等のほか、航空機可用率 ,任務可能率、ロジスティクス・システム負荷等数多くのPBL測定基準の設定が求められている。
■代表的な5つのメトリクスとは
1.ロジスティクス応答時間(LRT)
LRTとは装備品システムの故障が発覚してから修理など解決が正式に認められるまでに要したレスポンス時間(または日数)を示したもので、これには識別されてから満足する結果を得られるまでにかかった時間、即ち満足すべき結果(日)から必要性が識別された日を引くことで得られるとされている。
2.ロジスティクス・システム負荷(フットプリント)フットプリントとは与えられた任務遂行のために配備し持続させるロジスティクス・サポートの大きさを測定可能な因子で表したもので、在庫、装置、人員、保蔵、運輸、供給、不動産等が挙げられる。これら要因の数値化は難しい問題であるが、例えば個数、広さ、重量や人数など個別評価をもとに集積した分析が求められるとされている。
3.使用単価(CPUU)
使用単価とは人件費や管理コストも含まれた装備品システム当たりの全使用・支援コストを数値化された例えば航空機の飛行時間や飛行距離、回数などの因子で除したものとして表わされる。
4.可用性(Ao)
可用性とは航空機など装備品システムが任務可能な時間をパーセントで表したもので、ライフサイクルベースでは平均故障時間(MTBF)を利用する場合もある。
5.任務信頼性(MR)
装備品システムが運用成果を遂行するためのシステムの数値化および能力を表すもので成功したミッション(任務)の割合が重要な因子となる。
PBL策定における重要な点のひとつとして目標を達成できるかどうかを事前にリスク評価する必要がある。そこで各メトリクスではこれらのリスク・レートを設定し、ハイリスクやミドルリスク、ローリスクを定義し、識別している。PBLではリスク管理を徹底させ、例えば契約業者のシステムや活動を通して調査・分析をするなどリスク・ベース・アプローチの策定もまた重要な側面となっている。
上記の通りPBLにおいて重要なことは成果を測定する規準の策定にある。この規準の選択はそれによりPBLの成否が判断されるだけに大変重要であるが、いずれにせよ要求元は即応性に基づいた装備品システムの成果を測定可能な要素にすることが取得計画であり、契約業者はその成果をいかに達成するのかが大きな責任となる。
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