先輩ナースへインタビュー「第6回」
ケベック州、モントリオール、MUHC Montreal Children's Hospitalで働いているMakiさん
Mika、Makiさんはじめまして。同じカナダでも東部のケベック州でナースをされている人とお話が出来て大変嬉しく思っています。日本と違い州によって看護師になる制度も規定も少しずつ違うので、それらについて情報を発信できたらと思っています。まず日本での経歴を教えてください。
Maki、東京慈恵会医科大学医学部看護学科卒、看護学学士。資格は看護師、保健師です。慈恵会医科大学付属第三病院の小児病棟勤務5年。臨床指導などを最後の年はしました。小児看護全般。化学療法から脳神経、外科、整形、そして、小さなNICUまで全部看る病棟でした。
Mika、カナダに来たきっかけ、特にモントリオールを選んだ理由はなんですか?
Maki、5年働いたら海外に出よう、と決めていていました。5年がたち退職前に世界地図を広げて気になったフランスとカナダにビザの申請し、カナダからのビザが早く来たのでここへ来ました。モントリオールを選んだのは、フランス語圏のモントリオールというところに魅かれたからです。学生時代に行ったヴィクトリアやPEIのような英語圏ではないカナダはどうだろうかと興味がありました。
Mika、カナダの公用語が英語とフランス語なのはこのケベック州がフランス語を公用語としているからですよね。それにしても、フランスかカナダのモントリオールを選んだ理由はフランス語が日本にいる時からできたからですか?
Maki、いえいえ、フランス語は全く使えませんでした。それに英語も人並み程度のレベルでしたよ。
Mika、ではまさに全く言葉がわからない国へやってきたと言うことですね。たいへんだったのではないですか?
Maki、ケベック州の中でもモントリオールは英語を話す人がいて、フランス語と英語の両方が使える街です。だから"まったくわからない"と言うほどではありませんでした。それにフレンチスピーカー(フランス語を第一言語とする人)でも英語を流暢に話せる人がここは多いですからね。でもモントリオールを出るとフランス語一本と言う人が多くなりますよ。
Mika、うちの旦那がモントリオールへ行った時、必死にフランス語で話したら、あっさり英語で聞き返されて、恥ずかしかったと言っていましたよ(笑)。
Mika、ワーキングホリデーで来加して、何をしたのですか?
Maki、旅行です。準備期間がなかったので、学生ビザより簡単に取れたし、学校へ行かなくて良いからアフリカとかへ旅行しましたね。
Mika、カナダへ来てアフリカへ旅行!変わっていますね、でもしてはいけないと言うわけではないし、モントリオールからだったら、アフリカは遠くありませんよね。その後はどうしたのですか?
Maki、コンコルディア大学でマーケティングとビジネスマネージメントのコースへ行きました。これで学生ビザをもらいました。これは英語のコースでした。これをとる傍ら、フランス語を学びました。この後に、モントリオール大学のフランス語のサーティフィケートのコースに行きました。
Mika、英語の後にフランス語を学ぶなんて大変でしたね。
大恐慌社長
Maki、楽しかったですよ。フランス語を大学で学ぶと同時に、コミュニティーセンターの低料金のフランス語コースや教会で行われている無料のコースへ行きました。あとベビーシッターもしていたので、いろいろな家庭に行くことで、英語とフランス語の勉強そして文化を学ぶ機会になりました。
Mika、賢いですね、無料のコースで語学力を上げるなんて!BCでも教会が無料でやっている英語のコースがありますよ。さすが移民の国だから、移民者に優しいですよね。それに、ベビーシッターなどを通して、実際にその環境に身をおくことが言語の上達につながりますよね。よく、外国に行けば外国語が上達すると勘違いする人がいるけれど、家にこもっていたり、日本人とばかり話していては、上達しませんからね。
Maki、私も日本人の友達はいましたよ!でもモントリオールはバンクーバーと違って、日本人は少ないですからね。夏に学生さんをチラホラ見かける程度ですよ。直行便がないから人気がないのかもしれませんね。
Mika、バンクーバーはロブソン通りとかを歩くと日本語がどんどん聞こえてきますよ。あまりの日本人学生の多さに幻滅する人が多いのかもしれませんね。
Mika、学生ビザのあと移民をされたそうですが、看護師になる前にどうやってなれたのですか?
Maki、ケベックセレクション、スキルドワーカーで2006年に移民しました。
Mika、私は看護師になる前に個人移民を申し込んで、希望職業を看護師と書いたばかりに落とされたんですよ。もちろん、あの頃PNPは使用されていなかったし、看護師不足でも、労働組合のお陰で看護師は必要な職業に入れられていなかったのが原因でしたけどね。しかし、今でも看護師のライセンスや病院のスポンサーがなければPNPも厳しいのに、Makiさんは学生からの移民ですか、、、やはりケベック州は他の州と違いますね
Maki、ケベック州はいろいろな面で守られていて、移民の規定やプロセスが違うのも貴重なケベコワ(ケベック人、ケベック州に住む人)を増やすためですね。必要だったものは、高校と大学からの卒業証明書と成績表、今までいったすべての学校の証明書や成績表。それから、働いていた病院からの在職証明、そして、日本の看護師のライセンス、過去5年間の経歴などでした。あとは他の州と同じで健康診断や犯罪証明書などなどです。期間は、もっと首尾よくやっていれば1年と数ヶ月で終わったはずですが、実際1年半かかりました。
Mika、渡加したのが2003年そして移民したのが2006年。経済的にはどうやって自分を支えて来ましたか?
Maki、日本での貯金と、学生ビザで滞在中はベビーシッターをしていました。このベビーシッターは、随分クライアントがつき、最終的にはビジネスにしようか、と本気で思ったくらいでした。移民してからは、フランス語を学ぶためにフランス語のブティックで働いたり、また、HIVの研究をしているマギル大学の教授の研究室でインベントリーを作るアシスタントをしたりもしました。また、ケベックのツアーガイドとして働きました。その経験(ケベックの歴史や文化などを学んだこと、また歴史的な場所に何度もいったこと)がケベックセレクションの移民面接のときにとても助けてくれました。というわけで、貯金はまだだいぶ残っています。あと、2年は働かなくても大丈夫ですね。じっとしていられないたちなので、とにかく、いつも知恵を絞っていろいろと試していました。
Mika、すごい!まだ貯金が残っているなんて。私は持ってきたお金のほとんどを一年目に使ってしまって、苦労しましたね。もちろん一年で帰国するつもりだったので、使い切ってと言う感が最初にあったのがいけなかったのですが。そんな私に比べてMakiさんは計画的ですね。
"滝郡の公民権"弁護士ADA
Mika、BC州では英語の語学試験にパスしてから、CRNEを受けるようになるのですが、ケベック州はどうですか?
Maki、まず、OIIQに申し込みます。これは日本の看護協会のようなもの、BC州で言うCRNBCですね。移民をしていれば、リフレッシャーコースへ6ヶ月間行き、CPNP(Candidate of professional nursing practice)のステイタスを得てしばらく働き、州試験を受けます。他の州はCRNEですがケベック州はオリジナルのテストがあり、それを通るとRNとなります。このテストは筆記と実技です。あとフランス語の語学試験も必須ですが、リフレッシャーコースを終了後から、RNとなるまでにいつでも受けられる上に、TOEFLやIELTSと違い分野ごとに受験出来るようになっています。聞き取り、読解、作文、スピーキングの4分野で、私はすでに2分野をパスしたけれど他は落ちたので、おちた分野だけ次は受験します。
Mika、移民していなければリフレッシャーに行けないのですか?
Maki、モントリオールにはフランス語系と英語系のリフレッシャーコースがあり、フランス語系のプログラムは移民者のみとなっています。英語系のプログラムは、聞いたところ前例はないですが可能である、といわれました。ただ、移民だと無料(政府が負担)の授業料が、半年間約$7000が必要だそうです。しかし、実習に関しては前例がないので病院で受け入れてもらえるのかどうかは定かではない、ということでした。
Mika、と言うことは移民が大前提ですね。Makiさんはどちらに行かれたのですか?
Maki、私は最初、フランス語のコースにチャレンジしていましたが、ここには、フランス語圏からの移民(フランス語が第一言語のアルジェリア人、モロッコ人など)がとても多く集まっていて、試験を通るのが難しく、2度落ちました(10数人枠に100人近く集まるときもある)。日本人がその試験に来たのは初めて、ということで、一回目はとても驚かれましたよ。その間、その試験のための準備コースにも通いましたが、準備コースにメインコースからドロップアウトしてきた人たちが沢山来るようになり、その人たちの話を聞いているうちに、フランス語系の教育の仕方に疑問を持つようになりました。そして英語系のCEGEPのほうに方向を変えました。英語系のCEGEPはインターナショナルをカナダ人のリフレッシャー(しばらく仕事を離れていた看護師)と合体させたコースを提供していたので、とてもいい刺激になりました。学生へのサポートシステムもしっかりしていました。
Mika、Makiさんは3月に州試験を受験予定で、正確にはまだRNとなっていないけれど、インタビューに出ていただきありがとうございます。試験を頑張ってください。あと2分野のフランス語のテストも早く受かると良いですね。今はCPNPとしてMUHC Montreal Children's Hospitalで働かれているMakiさんにもう少し、お話を聞かせてもらいましょう。リフレッシャーの授業はどうでしたか?
バッファローのカナダ領事館はどこにあるのでしょうか?
Maki、 先生は5人。先生というよりもインストラクターでしょうか。OIIQのカリキュラムにそった授業を3ヶ月間行い、そして実習を3ヶ月間行いました。クラスメートは半分がフィリピン人、そして、カナダ人。あとはロシア人、韓国人、ルーマニア人、アメリカ人、そして、日本人が一人づつ。かなり大変なコースだったので、途中でドロップアウトする人もいましたが、みんなで助け合い終了することができました。特に、子どもを持っていた人たちは、大変だったと思います。ちょうど実習中にモントリオールの交通機関のストライキが2週間ほど続きました。車を出し合ったり、先生たちが車で生徒をピックアップしてくれたりと、ほんとうにいろいろありました。
Mika、子供や家庭があっても学校に行くのが当たり前のカナダ。大変だけどそういう人でも終了できるのがカナダの良いところですよね。
Mika、就職探しはどうでしてか?
Maki、私はとてもラッキーだったのか、履歴書を配ったその日の午後から翌日の午前中にかけてほとんどの病院から電話が入ってきました。探し始めて2週間で働きたいと思っていた2つの病院から内定をもらいました。ただ、私のようにすぐに決まったクラスメートは私のほかに一人で、それ以外の友達はかなり苦労をしたようです。最終的には、半分のクラスメートがフルタイム、パートタイムで就職しています。
Mika、他のクラスメートで就職がスムースにいかなかったのはどうしてですか?
Maki、経験がありブランクの少ないクラスメートの就職は割りとスムーズに決まりましたが、経験のないクラスメートや、ブランクが長いクラスメートは苦労したようです。また、フランス語が話せない、ということで本命の病院の最終面接に通らなかった、というクラスメートもかなりいました。
Mika、モントリオールは英語とフランス語の町。やはりフランス語が使えなくてはいけないのですね。
Maki、そうです。仕事場での記録は英語になっていますが、スタッフ間や患者とのコミュニケーションは英語とフランス語が半々です。フランス語が出来ないと難しいと思いますよ。それにRNになるまでにフランス語の試験に受かることが前提ですからね。
Mika、フランス語を学ぶのは難しかったですか?
Maki、もともと違う言葉を学ぶことが好きなので、辛くはないです。友達や同僚のサポートもたくさんあり、助かりました。ただ、フランス語は日本語のように書くのがとても大変な言語です。ネイティブでも難しい、といわれているので書くのはとても苦労しています。特に私はフランス語を耳から学んでしまったので、書くことが苦手になってしまいました(笑)。
Mika、今まで何が一番つらかったですか?
Maki、情報収集です。英語もフランス語もままならないまま、どこでどのように情報をとりいれていいかわからなかったことが辛かったです。しかたがないので、病院に直接たずねにいったりしました。その他には、英語とフランス語の読解。何度も何度も暗記するほどサイトや資料を読んで、語学が伸びたと思いますが、最初はつらかったです。あとは、移民が降りるまでの待ち時間が辛かったです。
Mika、就職後はどうでしたか?
Maki、今までいろいろな職を試したり、自分でビジネスを立ち上げようかと思ったりもしましたが、就職初日に「ああ、やっぱり、私の場所はここだ」と思ってとてもほっとしうれしくなりました。体の細胞全部が喜んでいるのがわかりました。この気持ちは、初めて日本で働いたときにも味わった記憶があります。小児看護の分野が私にはとても向いているのだと思います。また、私の働いている組織は、労働条件や職場の環境、サポートシステム、そして卒後教育のシステムがとても整っていて、本当にのびのびと、意欲をもって働ける職場です。だから、毎日とても幸せに(まあ、いろいろあることもありますが、それはあたりまえのこととして)働いています。唯一の欠点は、カフェテリアがまずくて高い!
Mika、これは東も西も同じですね(笑)。
Mika、カナダでRN(正確にはCPNP)になってよかった事はなんですか?
Maki、カナダで、というよりケベックでRNになってよかったことは、真のマルチカルチャーを体験できることでしょうか。モントリオールは、もともとフランス系とアングロサクソン系の二つの文化が交わるなかに、古くからはイタリア系、アイリッシュ系、アフリカン系、中国系、そして最近はイスラム圏から、またラテンアメリカン系、ルーマニア系と、移民が沢山入ってきています。いろんな文化に触れ合うと同時に矛盾を感じ、日々、試行錯誤の毎日です。言葉一つとってもフランス語と英語では違うし、それに日本語も加わるので、自分の中で少なくても3通りの考え方ができます。これがとても魅力的です。また、ここでの小児のオンコロジー(化学療法)は日本とは比べ物にならないほど進んでいて、毎日が学ぶことばかりです。いつかオンコロジーナースに なって日本にもどんどんいいところを輸出していきたいと思っています。
Mika、3ヶ国語が使えれば楽しさも3倍というところですね。
Mika、これからの目標はありますか?
Maki、専門ではオンコロジーナースを目指すことです。そして日本でも在宅の小児の化学療法が可能になるような方向付けを出来たら良いなと思っています。また、私の今働いている病院へのボランティアたちの介入は本当に画期的で、これを日本の小児の分野でも可能にしたいと思っています。そして小児のpalliative careのコンセプトをいつか日本に輸入できたらと思っています。それから、私の後に続く人たちをサポートしたいと思っています。でもケベックは少ないですかね。
Mika、 これからカナダでRNを目指している人に一言お願いします。
Maki、自分の育ってきた文化圏以外でナースをするときに一番大変で必要なことは、文化を知るということです。日本とカナダの教育の差は大してないので、専門的な知識は心配はいりません。ナースを目指したいと思った日から、文化を学び始めてください。私は"ナースを目指す"と決めた日から、できるだけたくさんの文化の中に自分を置き、言葉はもちろんのこと、食べ物、習慣、といろいろと学び続けてきました。 そして、「他人を愛するにはまず自分を愛すること」と、よく言いますが、文化も同じで、「他の文化を知るには自分の文化を知ること」だと思います。「日本の文化」も忘れず に!
Makiさんは3月のRNテストにパスして5月正式にRNとなられました!おめでとうございます。
次回はVancouver Coastal Health, Vancouver General Hospital, Neuroscience勤務の陽子さんが登場予定です。
Canada de Nurseではこのコーナーで紹介できる、カナダでRNとして働いている方の自薦、他薦を募集しています。希望の方はこちらへ連絡してください.
0 件のコメント:
コメントを投稿